被告人控訴趣意書訂正申立書ほか
行列のできる法律相談所
たけしのTVタックル(テレビ朝日)で成功した政治バラエティに続けとばかり、テレビ局各社は幾多の法律バラエティを展開した。そして現在、生き残っているのは日本テレビの行列のできる法律相談所(以下「行列」)だけである。行列は既に法律バラエティの体をなしていないが、タイトルに合わせて出演する弁護士は、しばしば裁判官の権限に委ねられた判断をテレビカメラの前でなしている。「最終的には裁判所の判断になりますが・・・」といちいち前置きをしていたら番組としておもしろくないからだ。
かつては、再現VTRをもとに「裁判でカネがとれるかどうか」を面白おかしく展開していた。しかしながら、現実の裁判において、「立証できるかどうか」は最大のハードルだ。
つまり、「再現VTRをどう描くか」は弁護士の仕事として難題であり、作業比重ががもっとも高いにもかかわらず、法律バラエティは難題を「争いのない事実」としているわけだ。
絶望しかない裁判所
私が最初の刑事事件を争った際、最高裁に出した被告人上告趣意書は、「どうせ負ける・・・」との挫折感に打ちひしがれながらも、最後の力を振り絞って書いたものだ。 医者の診断書を盾にした便乗詐欺に対する断固とした覚悟があったが、この裁判のために仕事を辞め、カネ目の物を売り払い、生活のために借金をしながら争い、一審二審で裁判所の現実を思い知らされた。
それでも「負けてたまるか」と、カネも仕事ない年末に、半分泣きながらまとめたのが被告人上告趣意書である。 法曹関係者の評価はさておき、どれだけ具体的な材料をあげても、被告人にとっての刑事司法は「とりつく島もない」としか形容しようがなかった。
被告人控訴趣意書訂正申立書、証拠説明書および証拠を提出
そして再び刑事被告人となり、お盆の連休最終日の日曜、徹夜して被告人証拠説明書をまとめた。併せて、被告控訴趣意書の訂正箇所をまとめ、これを被告人控訴趣意書訂正申立書とした。 なお、被告人控訴趣意書訂正申立書の体裁は、裁判所が推奨する訂正申立書には準じていない。
また、裁判所は慣例として挿絵を認めていないが、私はそれを多用している。 これは読む者の理解を助けるために当然のこととして行っているが、裁判所には反感を持たれるリスクと引き換えとなる。その意図は、法曹関係者しか読む気にさせない訴訟書類を、万人に読む気にさせるためだ。公開を前提としたHTML形式とし、リンクを巡らせているのも、万人の理解を助けるためである。
行政事件訴訟の証拠申立書をそのまま使うつもりだったが、7月31日に続き、また徹夜で可能な限り番号を整理し、同時に被告人控訴趣意書訂正申立書も精査のうえ修正をおこなった。 裁判所にはすべてをまとめたDVDを添付したが、おそらく裁判官はDVDを見ないだろう。
そして、裁判所の慣例に従って紙に印刷した書類はおよそ300枚だ。これを3人の裁判官と検察の合計4部刷らなければならない。自慢のカラーレーザープリンタのトナーは、見る見る減っていった。私は予備のトナーカートリッジを3セットのほか、同じレーザープリンターを予備として注文した。
当初、東京高裁第8刑事部の小暮書記官は、証拠の提出を2週間遅らせてくれた。しかしそれでも足りず、さらにお盆明けの月曜まで期限を延ばしてもらっていた。お盆最終日から翌日の月曜の朝5時までかけて、ようやく印刷が完了した時点で力が尽きた。 「あと1日期限を延ばしてもらおう」と考え、仮眠をして出社した。
昼休みに東京高裁に電話すると担当の小暮書記官は休暇とのこと。電話に出てくれた書記官に翌日火曜日までの延期を申し出ると、ふたこと返事でそれを認めてくれた。 いつもよりかなり速い午後7時半に帰宅し、最終チェックと押印・梱包を行った時点で午後9時半。当てにしていた宅配便の受付が午後7時半で終了していることにようやく気付き、しかたなくクルマで東京高裁の夜間受付に持参した。
一縷の希望に賭けながらも、ここまでの作業が絶望的なのは、控訴要件の問題のほか、第1審の判決文に示したとおり、どれだけ手間をかけても検察が安易に被告人側の証拠を不同意にし、裁判官は検察の不同意を極めて当然のように尊重し、被告人側の証拠を不採用としてしまう現実だ。
なお、控訴審の担当となる東京高裁第8刑事部の裁判長は、大島隆明氏。調べてみると、横浜事件の第4次再審請求を認めた裁判官のようだ。さらに袴田事件の再審請求抗告審の担当裁判官でもあるようだ。 ただし、たった一握りの勇気ある裁判官の大英断に期待することなく、自分の信じる方法で最後まで争ってみたい。
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