フジテレビと中居正広氏の不同意性交罪の無罪放免(刑事司法の隠ぺい体質)が水面下のレイプ天国を覆い隠す

この記事では、レイプに関する法改正の内容、過去の連続強姦事件、テレビ局や芸能事務所が性犯罪に加担した事例を挙げながら、警察が中居正広を捜査する必要性があることを示す。なお、被害者との示談があったとしても、そもそも告訴を要件としなくなった現行の不同意性交等罪の捜査をしない理由にはならない。
性犯罪を捜査しない警察
フジテレビにおける中居正広の性暴力報道により、性暴力に社会がどう対応すべきかが試されている。フジテレビの第三者委員会の調査報告が民事事件としての視点でまとめられたに対し、この記事は、刑事事件としての側面にフォーカスした。
個別事案を社会事案として念頭に置くべきは、民事事件と刑事事件の区別である。被害の回復や賠償のために民事訴訟制度が存在し、治安を維持するための刑事訴訟制度が存在する。とうぜん、民事上の被害を償ったからといって、刑事上の罪が消えることはない。
治安を維持のための刑事司法
次に押さえておくべきは、刑事事件としてのレイプ(強姦・強制性交・不同意性交)が、殺人や強盗と並び、警察庁が指定する重要犯罪のひとつであることだ。次に、刑法におけるレイプの取り扱い推移を確認する。
レイプの分類と認知の方法
2017年、改正刑法が施行され、『強姦』という言葉は刑法の条文から消えた。2023年の改正では、『不同意性交』という言葉が導入された。これはレイプが、性別を問わず行われることに対応したものである。もうひとつの大きな変更は、 レイプが非親告罪となったことだ。

強制性交も不同意性交も非親告罪
中居氏と被害女性との件は、2023年6月2日発生しているので、強制性交または準強制性交に該当するかどうかが刑事司法上の判断基準となる。ただし、どちらも非親告罪なので、告訴がなくても、必要に応じて警察は捜査をすることができる。

問題なのは、レイプが非親告罪となっても、上図の黄色い枠に記されたとおり、捜査するか否かが警察次第であることだ。被害届や告訴/告発のないレイプ事案の場合、それを警察が事件として認知しない限り、刑事事件にはならない。つまり、犯罪統計に発生件数としてカウントすらされないこととなる。
警察が認知(≒捜査)しなければ、事件は統計されない
次の図では、レイプと交通事犯における認知率(発生件数の捕捉率)を比較した。タブを切り替えて、右下にある認知率の大きな違いを確認してほしい。

犯罪の受付段階における警察の取捨選択

上図中、最下段の認知件数が決まる段階は、いわば『犯罪受付の段階』である。多くの場合、被害届の受理件数が認知件数となる。

警察は、検挙件数が一定の数値(重要犯罪で90%以上)にあることをことさらアピールしているが、頻繁に指摘される通り、警察が被害者の訴えを『 犯罪受付の段階 』で排除する傾向がはなはだしいことだ。
犯罪情勢の基本データの提供さえ渋る法務省
そこで警察ではなく、法務省に詳細な犯罪統計データを求めてみた。しかし、ほとんど嫌がらせのような壁を作られてしまい、改正の効果を検証することができない。
あまりにも納得がいかないので、法務省の担当者にデータを求めた際の通話記録を公開する。
レイプ事件史上、特筆されるべき事件
カリタ・リッジウェイ事件(当時、見逃された事件)
1992年当時、21歳のオーストラリア人カリタ・リッジウェイは、銀座のバーで働きながら、演劇学校に通うための資金を貯めていた。カリタは、遺産相続で裕福な実業家で在日二世の織原城二と同伴の後、薬物を投与され、強姦された。その際、投与された薬物が過剰であったため、カリタは、中毒症状を起こし、脳死状態となった。オーストラリアの家族は、彼女の生命維持装置を外すことを求め、カリタは死亡した。家族は、死因を究明するよう求めたが、警察は動かず、肝炎による病死のままとされた。そうして、折原の犯罪は明るみに出なかった。
連続強姦の温床は犯罪認知の甘さ
カリタの後も、折原が薬物を使ったレイプを繰り返した背景には、捕まるリスクの低さを実感したことにあるだろう。認知されないことは捜査に怯える必要がないことを意味し、折原は安心して重犯に及んだに違いない。
カリタさんに対する折原の犯罪は、後のルーシー・ブラックマン事件で意識不明のカリタをレイプするビデオとクロロホルムの過剰摂取を記録した折原の日記が発見されたことから、真相が明らかとなる。
ルーシー・ブラックマン事件(日本より英語圏でよく知られた事件)
2000年、失踪したルーシー・ブラックマンを探すために来日した家族が情報提供を呼び掛けるキャンペーンを行ったことから、事件は広く認知された。2001年2月、切断されたルーシーの遺体が、神奈川県三浦市の海岸で発見された。
この事件が広く報道されたのは、父親のティモシー・ブラックマンが、来日(7月12日)し、英国大使館で記者会見(7月13日)を行い、懸賞金をかけての捜索キャンペーンを行ったからだ。
後手なのにドヤ顔の警察
一方、この事件をドキュメントした書籍や映画は、警視庁捜査一課の刑事たちの「執念の捜査」にフォーカスしている。しかし、カリタ事件を合わせて、折原の犯罪に対する警察の評価をすると、「後手なのにドヤ顔」の印象は否めない。
無能な警察/タブー視される警察批判
ついでに書くと、イギリス人ジャーナリストのリチャード・ロイド・パリーは、著書のなかで「(警察組織は)―昔もいまも―傲慢で、独善的で、往々にして無能だった。警察能力に対する批判は、日本社会に隠されたタブーのひとつである。」と記している。
なお、捜索キャンペーンによって、以前にも東京に滞在していた3人の女性が折原容疑者による準強姦の被害を六本木警察署に訴えていたことが明らかとされたが、警察はそれを取り合わなかった。
数百件の昏睡レイプを犯した可能性
折原の自宅からは、昏睡状態の女性との性行為を映した約400本のビデオが発見された。映像は、少なくとも150人にレイプをした可能性を示していたが、裁判では、身元の特定ができた10人の女性に対する準強姦と、2人に対する過失致死の疑いで起訴された。
(サプルメント)見舞金や示談金による情状酌量の効果
ルーシーの父、ティム・ブラックマンは、「見舞金」名目で45万ポンド(約5000万円)を加害者の折原から受け取った。折原は、その他複数の被害者に「見舞金」を渡している。「見舞金」によって、情状酌量を期待したのであろうが、第2審の東京高裁は、「見舞金」を重視していないと告げ、無期懲役の判決を言い渡した。
伊藤詩織事件(テレビ局を背景に持つ事件)

「よくある話しだし、捜査するのは難しい」
日本テレビの幹部山口敬之にレイプ被害を届け出た伊藤詩織に対し、警視庁高輪署の捜査官はこう言って被害を受付けようとしなかったのだそうだ。

それでも伊藤は、被害届と告訴状を提出し、ようやく捜査が開始される。しかし『安倍総理にもっとも近いジャーナリスト』と言われていた山口敬之の逮捕は、中村格刑事部長(当時)によって、土壇場で執行が停止された。そうして、伊藤が告訴した事案は不起訴とされた。
伊藤が民事裁判で自ら争わざるを得なくなったのは、刑事司法が山口の責任を追及しなかったからだ。その後、伊藤はレイプの被害を告発する手記『ブラック・ボックス』を発表した。
過去にまとめた記事があるので、参照して欲しい。
ジャーニーズ事務所での性加害事件
警察が事件として認知しない限り『事件』という言葉を使わない慣例があるが、あえて『事件』をタイトルに使っている。単に他の事件との並びを考えてのことだ。
ここでは、ジャーニー喜多川の行為について、警察が『事件』として認めておらず、性犯罪の統計さえカウントされていない事実の指摘に留める。
そしてジャニーズ出身のタレント中居正広の性加害事件
性加害の舞台となったフジテレビに対しては、スポンサー企業の相次いだCM中止が事実上の制裁となった。会社の存続を左右しかねない減益、株主訴訟のプレッシャーによって、日枝久を含む経営陣の刷新を余儀なくされた。
一方、性加害を実行した中居正広は、何の説明もせぬまま雲隠れした。警察に、不同意性交等罪の捜査をする気配はない。
刑事司法のBLACK BOX とその蛇口
現実離れの犯罪統計
以上のとおり、警察の怠慢と被害届の受付け拒否により、レイプの発生件数は、現実からかけ離れた低い数字となる。その結果、レイプの実情に即した注意喚起がなされることはない。
捜査をしない警察と重犯を重ねるレイプ犯
そして、密室での性犯罪に対し、警察がまともな捜査をしないことを知っている犯罪者たちは、安全神話で無防備となった女性たちを捕食する。
沈黙を余儀なくされるレイプ被害者
一方、レイプ被害者に向けられる偏見とタブーは存続し、被害者が沈黙せざるを得ない状況が固定化する。
刑事司法のブラックボックスにおける警察と報道機関の相関図を作成した。報道機関が警察に媚びる理由が見えるはずだ。

警察の大活躍ばかりを報道するテレビ局
刑事司法が性犯罪の被害者のために機能しない反面、警察との連携または癒着によって犯罪ネタを仕入れる報道各社は、ほとんどの事件を警察が『解決』しているかのような報道を行う。
警察ドキュメントのヤラセ
各テレビ局は、おびただしい数の警察ドキュメントを放映している。2024年3月に放映された「激録・警察密着24時!!」では、愛知県警の警察官らに演技(捜査を再現)させた画像を実録として使用したことが「やらせ」と指摘されたほか、複数の問題がBPOに指摘された。これにより、テレビ東京は当シリーズを作成しないことを決めた。
そして犯行を重ねるレイプ犯
その一方、性犯罪の補足率が極めて低いことは、大多数が捜査されないことを示している。とうぜん、性犯罪者は、捕まるリスクが低いことを理解する。これが重犯の動機となることは火を見るより明らかである。
メディア仕掛けの社会秩序
レイプの捜査に後ろ向きな警察も、検挙がかんたんな事件に対しては大活躍だ。
逮捕権を乱発する警察

「逮捕だ!逮捕!!」と元気な警察官のキャラクターが赤塚不二夫のマンガにある。 そして、現実社会でも、逮捕の必要性に首を傾げたくなるような些細な事案で、警察官は、逮捕権を乱発している。
報道による事実上の制裁
マスメディアは、警察から逮捕者の情報提供を受け、これをニュースとして扱う。そうして、実名で報道された逮捕者は、報道による事実上の制裁を受けることになる。言わば『見せしめ検挙』による事実上の制裁が、法による制裁よりも、現実的な制裁として機能しているのである。
レイプや殺人より交通に向けられる警察力
問題なのは、逮捕・報道される事件が、警察のさじ加減次第であることだ。そして、インパクト映像があって、警察予算につなげやすお交通事犯に大きな比重がおかれている。道路交通法を警察が所管しているので「大きな網」をかけることもできる。一方、殺人やレイプや経済犯罪のリスクを煽っても、警察予算を増やす口実にはならない。それゆえ、警察力は交通ばかりに向けられれている。

そして殺人は野放し状態
年間1万2000人が原因不明の死を遂げ、年間8万人が行方不明になっているにもかかわらず、時代おくれの検視制度により、犯罪死の見逃しが横行している。
<タブーの壁>誰もが殺人を疑う不審死さえテレビは追及しない。


犯罪放置国家
以上のとおり、報道機関と警察とのなれ合いによって、表向きに報道される内容と、報道されない現実とが、はなはだしく乖離している。そうして、知る権利は毀損され、危機的状態にあると言わざるを得ない。知る段階に大きな問題のある日本で、民主主義がまともに機能するわけがないだろう。
以下に続く画像には、別記事へのリンクが貼られています。とても大事なことなので、ぜひ読んでほしい。
大企業の犯罪も野放し

脱法産業を育成し、その被害者は放置

失われた30年の裏側で肥大化する権力と沈黙するメディア

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