警察は行方不明者を探しているか?
海外の警察のWEBサイトでは、行方不明者の情報を広く求めるための”Missing person list”が広く公開されている。一方日本の警察本部と警察署のWEBサイトには、行方不明者の情報を求める公示はない。たまにあるのは、特別なケースだけである。
2017年10月12日、私は最寄りの倶知安(くっちゃん)警察署を訪れ、入り口両側の掲示物の写真を撮った。
目立つのは、何十年も並び続ける凶悪事件の指名手配。行方不明者の目撃者募集ポスターは、誘拐事件を除いて7枚だ。そのなかに、倶知安警察署管内で届出られた行方不明者の情報を求めるものは1枚もない。7枚の内訳は、泉佐野警察署(大坂)、函館中央警察署、奈良警察署、大分東警察署、大分飛騨警察署、仙台東警察署が2枚で2人分、計7人分だ。
全国では、毎年約8万人の行方不明届がなされている。全国には1,163(2017年4月時点)の警察署が存在するので、単純に警察署数で割ると、警察署あたりの行方不明届け数は、1年間に63人となる。
殺人天国を書いていた2年前、私は、行方不明者数の統計の調査するために、警察庁の情報公開室に電話した。しかし、窓口の警察官は、統計情報の公開に対する事前相談を、露骨に拒絶した。そこで、私は警察庁をあきらめ、警察署が行方不明者に対し、いったい何をしているかの調査をはじめたのである。
行方不明者が事件に巻き込まれている可能性
少し調べればネットでたくさんの情報が拾えるとおり、基本的に警察は行方不明者を探そうとしない。なぜなら、あまりにも数が多いからだ。倶知安警察署に貼られた7枚も特別なケースである。
殺人天国 現実へのステップ04 – 行方不明者が殺害されている可能性 –に示した通り、動機薄弱な行方不明者には、事件に巻き込まれた可能性がある。そして、報道される監禁事件の多くは、近隣の市町村で監禁されている。行方不明届を出した家族の同意を得て、警察署が積極的な公示を行えば、事件の糸口をつかめるかもしれないのである。捜査など必要ない。
過去10年間の北海道における行方不明者数を警察署毎に統計するよう情報公開を申し込んでいる。統計が届いたら、さらに詳細を記事にしたい。
動機のない行方不明者の行方
殺人天国 現実へのステップ04 – 行方不明者が殺害されている可能性 –のデータを補完する作業については、警察庁の情報公開室に打診中だが、10月25日の情報公開窓口の警察官の口ぶりでは、うやむやにされてしまう可能性は高い。
なお、私が行方不明者の動機(「その他」がいったい何なのか)にこだわるのは、動機薄弱の行方不明者が事件に巻き込まれた可能性は、動機のある行方不明者よりはるかに高いからだ。
凶悪犯罪の一般化
行方不明者が巻き込まれる事件として、誰もが想像するのが、殺人、監禁、拉致である。
「えっ!? あの人が・・・」と周囲の人が驚く事件は、もう何十年も前から珍しくなくなっている。凶悪な事件は普通の人が起こしているのである。
前述のとおり、行方不明者の居所の近隣での公示は、監禁事件解決の有力な手段だ。行方不明者の居所を管轄する警察署、その近隣警察署の影響下にある場所とネットで公示するだけでよい。多くの監禁事件は、半径100キロ以内で監禁されているからだ。この傾向は、動機が性的欲求である場合、特に顕著だ。
もはや全国指名手配のポスターに効果はない
指名手配の公示に並ぶような、悪人顔だけが犯罪を犯す時代はとうに終わっている。現代において、指名手配犯の顔を貼り出すことに、もはや効果ほとんどはないのだ。帽子やサングラスやマスクで顔を隠すことが、当たり前になっているからだ。また、整形手術の技術進歩と低価格化も、その理由である。
実例として、昭和46年に警察官を殺害した容疑で、全国指名手配されていた大坂正明容疑者が事件から45年後に逮捕された。その顔は、指名手配の写真とはまるで別人であった。大坂容疑者の逮捕は、全国指名手配ポスターに効果がないことを証明したといえる。
行方不明者の公示をおろそかにし、効果の薄い悪人顔の指名手配犯ばかりを公示する警察が、私には、事件の捜査より、犯罪の恐怖をアピールすることによって、警察の存在価値を高めようとしているようにしか見えない。重篤な事故が多発しているかのようにアピールする交通事故のプロパガンダと同類だからだ。
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