ニセコの土地転がしに係る汚職疑惑を告発
蘭越町の前町長・現町長・副町長らによる背任の疑惑
2023年3月27日、ニセコ観光圏を形成する蘭越町の町長・副町長らによる背任の疑惑を告発する告発状を、倶知安警察署に提出しました。
警察が告発を受理したら、告発状の最終版を公開するが、告発内容の概要と、民主主義社会における『告発』という行為の重要性をこの記事にしました。
2023年6月20日、倶知安警察署桜井警部補は、3月27日付けの告発状と、5月22日付けの告訴状を、6月20日の電話で受理扱いとしたことを連絡した。(受理番号600123)。告発状・告訴状の公開については、次の理由から、公開をしばらく保留とする。
- 捜査に支障、あるいは、担当する捜査官のやる気をなくさせるおそれがある。
- 警察が漫然と行う刑訴法47条の拡大解釈により、告発人が 刑訴法47条違反の疑いを受けるおそれがある。
訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合は、この限りでない。
刑事訴訟法第47条
告発状は、私自身が作成したものであり、捜査の過程で警察が作成したものではない。しかしながら、警察・検察は、刑訴法47条を漫然と拡大解釈しており、告発状にプライバシー保護の処置を施したとしても、公開することそのものが刑訴法47条に抵触する、という判断して、私が刑罰を受ける可能性があるのだ。
なお、並行して提訴した国家賠償請求については、別サイトのぺージで公開しています。
公務員の犯罪はほとんど認知されない
公務員が職権を濫用しての経済犯罪(背任・汚職)は、詐欺や横領と一緒に『知能犯』に分類されている。しかし、公務員の経済犯罪は、背景が大きく異なっているので、本来は、分離して議論されるべきものだ。
なお、 知能犯の認知率は低い。その中でも公務員の背任・汚職は、他の知能犯罪より認知率が低いことが予想できる。これは、警察が捜査の困難な犯罪を扱いたがらないことに起因する。
北海道ニセコエリアの地価高騰と土地転がし
世界屈指のパウダースノーが評価され、ニセコエリアは国際リゾートへの道を歩んでいる。外資を中心とした積極的な投資により、標準宅地の地価上昇率は、6年連続全国1位(2014-2020年)を記録した。コロナ禍の影響による停滞はあるものの、2030年には、北海道新幹線の倶知安駅オープン、また、札幌冬季オリンピックにおいて、ニセコはアルペンスキーの競技会場となることが予定されている。このふたつは、さらなる地価の高騰が発生する材料となっている。
バブル経済への懸念
一見、華やかな経済成長の影には、憂慮すべき問題がある。それは、乱開発やバブル破綻、あるいは、外資による土地の買収による環境や安全保障への悪影響だ。
そうした悪影響を排除するために、転売目的の投機よりも、長期視点で公益重視の有効活用を促す必要が求められている。
チセヌプリスキー場の売却と借地権の土地転がし
ニセコエリアの地価が明らかな急上昇を描きはじめた2016年、蘭越町はアンププリ山の隣山チセヌプリの山麓のスキー場施設と土地の借地権を民間の外資系スキーツアー会社に売却した。しかし、町は、どんな公募があったのか、選定はどのように行われたかを公開しなかった。また、町民に対しては、リフトの再開を仄めかしていながら、公募参加者の一部に対しては、リフトの再開を条件にしなかった。
そして、公募選定の末、譲渡を受けた外資系スキーツアー会社は、公募提案した事業とは異なる事業(極めて少数の富裕層に対し、リフト代わりの雪上車によるエクスクルージブなスキー場運営)を行っている。
「なぜ、町は公募での提案と異なるスキー場の運営を容認するのか?」
2020年5月27日の取材において、町長と副町長は、何ら具体的な理由を明らかにすることなく、提案と異なる事業を容認することをぬらりくらりと回答した。
公募提案と異なる事業を容認することは、公募の意義が完全に失われることを指摘したい。
譲渡を受けた外資系スキーツアー会社は、契約から2年を待たずに転売の意思を表明した
蘭越町議会に対する陳情において、議会の専門委員会は、陳情書の文言をすり替えた審査結果を報告し、議会は不採択を決定した。筆者は、不服を申立てる術がないことを知っていたが、異議申し立てを行った。
蘭越町と議会が、公募譲渡のやり方も、その結果も、問題視しない中、北海道に対する情報開示請求によって、譲渡からわずか2年後の2018年の段階で、外資系スキーツアー会社が、北海道後志振興局森林室に転売の意向を示していたことが、北海道への情報開示請求により発覚した。
わずか2年での転売は「借地権の土地転がし」と言え、公募で提案したことを実行しないままの転売なので、極めてたちが悪い。なお、事業者が転売を表明したことは、2018年9月7日に蘭越町に通知されていた。そうすると、町長と副町長は、既に事業者が転売の意思表示をしたことを知っていながら、2020年5月27日における筆者の取材(前掲の動画)に対しては、外資系スキーツアー会社を擁護したことになる。転売によって、公募条件の効力が失われることが明白であるにもかかわらず、町長らがリフト再開を仄めかすことは、背任隠しを意図した言動であることを指摘せざるを得ない。
外資による土地ころがしの対象エリア
ニセコ観光圏における蘭越町とチセヌプリスキー場の位置
ニセコ山系におけるチセヌプリスキー場の位置
告発に関係する土地(チセヌプリスキー場・雪秩父・チセハウス)の位置図
国定公園内の道有林で土地転がしが発生するまでの経緯
蘭越町長らは、星野リゾートの開発提案を町民に知らせずに断った
2012-2013年、町営の日帰り温泉施設「雪秩父」が建て替えられる前、星野リゾートは、ホテル建設に20億円の投資を提案とスキー場の運営委託も受ける考えを示した。しかし、蘭越町長らは、星野リゾートが計画を途中で取りやめるリスクを理由に交渉段階から難色を示した。そして結局、町長らは、町民に知らせることなく、星野リゾートに一方的なお断りを通知した。
上場企業UTグループに対しては非紳士的なやり方で撤退を促した
2015年、蘭越町の人口の約2倍の社員数(当時約9000名)を擁する上場企業UTグループは、蘭越町によるチセヌプリスキー場の売却公募に応募し、蘭越町から譲渡の基本合意を取り付けた。 UTグループは、蘭越町に5000万円を支払い、さらに3憶7500万円を投資して、通年型レジャー施設とすることを予定していた。年間あたりの集客は、9万人が見込まれていた。またUTグループは、蘭越町内の閉鎖した温泉施設「薬師温泉」の跡地を購入しており、宿泊施設とセットでの運営を予定していた。なお、当時の交渉記録に、スキー場の譲渡対象として、「借地権」という言葉は出てこない。そして、UTグループが、蘭越町からの転貸を想定していたことが示されている。
交渉開始から半年後、蘭越町は、UTグループに対し、北海道が保有する土地の借地権の扱いを、権利承継であることを伝え、公募条件にない連帯保証人を求めた。蘭越町長らは、突然の条件変更を交渉するために来道したUTグループの社長らに対し、「外国の方に話を掛ければやってくるところはいくらでもあるよ」「次の候補も来ているんだろう」などと言い放ち、UTグループに公募参加の白紙撤回を促した。
外資系スキーツアー会社に対しては、8割引きの価格で、公募提案の実行を担保する条項なしに契約した
2016年、ニセコ観光圏の地価高騰傾向が明らかであるにもかかわらず、蘭越町は、チセヌプリスキー場の公募価格を5分の1に引き下げた。そして3回目の公募において、蘭越町は、公募の内容も選定情況も町民に公開せず、資本金300万円の外資系スキーツアー会社に売却した。
蘭越町は、星野リゾートとUTグループに対しては、事業が中止される可能性をことさら持ち出しては難色を示したにもかかわらず、 外資系スキーツアー会社との契約においては、事業が行われなかった際の買戻し特約も、転売禁止特約も入れなかった。
譲渡契約が締結された後、外資系スキーツアー会社は、国定公園内なのに、客以外がスロープに入ることを禁止し、全山貸切型の事業を始めたことが他のスキーツアー事業者やスキー愛好家に批判された。蘭越町の問題が明らかとなる過程は次のとおり。
- 蘭越町は、各公募参加者のプロポーザル提案と選定の内容を公開せず、結果だけを広報した。
- 譲渡後、運営が開始された2016-17シーズンには、数十件の苦情が蘭越町に寄せられた。
- 蘭越町は「苦情は北海道に言うべき」との対応をした。
- プロポーザル文書の開示請求により、提案と異なる事業が行われていることが露呈した。
- 取材に対し、町長と副町長は提案と異なる事業を容認することを明言した。
譲渡から2年足らずで転売の意向を示した
2018年9月5日、外資系スキーツアー会社は、後志振興局森林室に対し、スキー場事業を別の会社に譲渡する予定があることを伝えた。同議事の記録は、2日後の9月7日に山内勲副町長にメールで送られた。
なお、告発人が蘭越町に情報開示を求め、開示された文書には、外資系スキーツアー会社の事業再編のニュースと自然公園法違反に対応するための議事録は公開したが、町が公募内容に準じたスキー場の運営を求める議事録を何ひとつ公開しなかった。また、蘭越町は、北海道から蘭越町に通知されたはずの転売の予定を伝える文書も公開しなかった。
告発の効果
不幸なチセヌプリスキー場については、過去にまとめたコンテンツを参照ください。
なお、告発状は、警察が受理した最終段階のものを公開する予定です。
告訴告発を拒絶する警察
ところで、刑事訴訟法には、次に示すの条文がある。
告訴、告発または自首をする者があつたときは、管轄区域内の事件であるかどうかを問わず、この節に定めるところにより、これを受理しなければならない。
刑事訴訟法第63条
しかし警察官は、さまざまな方便を用いて、告訴・告発を受理を拒絶しようとする。そうした受付段階による警察官の取捨選択が、犯罪統計を歪なものとし、もっと注力すべき犯罪なのに、警察が手を付けない犯罪分野が生じる原因となっている。そして、警察が告訴・告発を拒絶するのは、民意を排除し、『犯罪の受付段階』における警察の取捨選択が大勢を決めるシステムによって、刑事司法制度における警察の影響力を最大化するためだといってよいだろう。
時代おくれの刑事司法がもたらす様々な問題
警察が殺人事件を捜査しない問題については、次の記事を参照ください。
警察が性犯罪を捜査しない問題については、次の記事を参照ください。
国家賠償請求
刑事告発と併せて、蘭越町と蘭越町議会の取材妨害に対して国家賠償を提訴した。
詳細は、別サイト「創世カウンシル」の記事を参照ください。
執筆者プロフィール
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