ソロモンカーブ(翻訳版)

行政事件訴訟における横浜地方裁判所の求めに応じ、wikipediaの「Solomon curve」を翻訳した。

ソロモンカーブ

ソロモン曲線は、同一道路における速度毎の衝突率を平均車速と比較したグラフである。

この曲線は、1950年代後半にデビッド・ソロモンが行った調査に基づいており、1964年に発表された。[1]

最初の調査

ソロモンカーブ

The Solomon curve as published in Accidents on main rural highways related to speed driver and vehicle.

1964年、ソロモンは平均速度や自動車の衝突率との関係を調査し、結果を表にした。

他にも平均速度と衝突率との関係を測ろうとする研究があるが[2]、ソロモンの研究は「最も早く、よく知られている」[3]。

ソロモンは、10,000以上の衝突に関与したドライバーと車両を分析し、ドライバーと車両特性が衝突事故に巻き込まれる確率に与える影響に関する総合的な研究を行った [4]。

彼は、走行速度を示すU字型曲線の中央付近が最も事故リスクが低いことから、走行距離毎で衝突事故に巻き込まれる確率が走行速度に関連することを発見した [5]。

一般的にソロモンカーブと呼ばれるU字型曲線は、クラッシュリスク曲線とも呼ばれている[6]。

その後の調査

1968年、ジュリー・シリロは、州間高速道路の車両2000台に対し、同様の実験を行った。2台以上の車両が関与した衝突事故に対し、速度偏差毎の事故要因をグラフ化した[7]。

シリロのデータはソロモン曲線に類似したU字状の曲線を形取った[8]。

リサーチトライアングル研究所は、インディアナ州の高速道路で216台が関与した114の衝突事故の調査を次の方法で実施した。

(1)常設の速度監視ステーションに訓練を受けた事故調査官を置いた。

(2)交通の流れの中で遅い車両を避けるための減速を区別した。

この調査は、速度偏差の関連性を測るためである[9]。

これらの結果に基づいて、1971年、ウエストとダンは、ソロモンとシリロの調査結果を確認した[10]。

全ての衝突事故の44パーセントがturn中の車両が関わる事故であることが確認された。そして、これらturn中の衝突事故を除外することは、ソロモンカーブのU字型を形作る要因を弱めることがわかった。[11]

1991年、フィルデス、ランボールド、そしてリーニングは、707人のオーストラリアの車両運転者が申告した200以上の事故データを集めた。

しかし、彼らは、ソロモンとシリロのように、より遅い速度と事故の増加の関連性を見出すことはできなかった [12] 。

この数年にわたる多くの研究にもかかわらず、2003年6月10日に実施されたオハイオ州上院ハイウェイ運輸委員会での証言において、連邦自動車運送安全局(FMCSA)の元副管理者兼最高安全責任者のジュリー・シリロは、次のように証言した。

「現在に至るまで、平均速度から離れて走行することが事故の主要因であるとしたソロモンの研究を否定する証拠は存在しなかった。」[13]

理論的基礎

ハウアーは、1971年にソロモン曲線の理論的な基礎を提供した。

「例えば、毎時60マイルで流れている道路で、私が毎時45マイルで運転したら、何台もの車両が私を追い越し、同時に衝突の機会が発生する。」

すなわち、理論的分布がソロモン曲線とほぼ同一であることを示した[14]。

実質的な影響

ソロモンの研究は、速度偏差に着目したのであって、速度そのものではない。しかし、研究者のなかには、速度と衝突リスクが直接的に関連していないという結論を補完するためにソロモンの研究を引用した者もあった[6]。

レナード・エヴァンスは、ソロモンの研究が、平均速度周辺の安全性が重要であること明らかにしたことを認める一方で、速度偏差ではなく、ドライバーの速度を絶対的にコントロールすることが、交通安全規制の第一焦点であるべきである結論付けた[15]。

どちらの考え方も、ドライバーの速度と平均速度の間の差が大きくなることは、それがより速くとも遅くとも、事故に関与する可能性が大きくなるというソロモン・カーブの根本的な研究が示した事実に沿っている[16]。

その結果、多くの州や交通安全機関は、交通の流れに沿って運転することを推奨している[13]。

References

  1. ^ Solomon, David (July 1964, Reprinted 1974). “Accidents on main rural highways related to speed, driver, and vehicle”. Technical report, U.S. Department of Commerce/Bureau of Public Roads (precursor to Federal Highway Administration). 
  2. ^ Meyer, John Robert; José A. Gómez-Ibáñez, William B. Tye, Clifford Winston (February 1999). Essays in Transportation Economics and Policy. Brookings Institution Press. p. 275. ISBN 978-0-8157-3181-8. 
  3. ^ Kloeden CN, McLean AJ, Moore VM, Ponte G (November 1997). “Travelling Speed and the Risk of Crash Involvement”. pp. Section 2.1. Retrieved 3-1-2009. 
  4. ^ Johnson, Steven L.; Naveen Pawar (November 2005). “Cost-Benefit Evaluation of Large Truck- Automobile Speed Limit Differentials on Rural Interstate Highways” (MS Word). University of Arkansas, Department of Industrial Engineering: Page 24. Retrieved 2009-03-01. 
  5. ^ Chan, Kuei-Yuan; Steven J. Skerlos, Panos Y. Papalambros (2006-09-10). “A CASE STUDY IN VEHICLE EMISSIONS REGULATIONS TO ACHIEVE AMBIENT AIR QUALITY STANDARDS” (PDF). Proceedings of IDETC/CIE 2006. Philadelphia, Pennsylvania: ASME. p. 8. Retrieved 2009-03-01. 
  6. ^ a b Society for Safety by Education Not Speed Enforcement. “Is speed killing us?”. Retrieved 3-1-2009. 
  7. ^ Cirillo, J. A. (1968). Interstate System Accident Research Study II, Interim Report II, Public Roads, 35 (3). pp. 71–75. 
  8. ^ Johnson, Steven L.; Naveen Pawar (November 2005). “Cost-Benefit Evaluation of Large Truck- Automobile Speed Limit Differentials on Rural Interstate Highways” (MS Word). University of Arkansas, Department of Industrial Engineering: Page 25. Retrieved 2009-03-01. 
  9. ^ Research Triangle Institute, “Speed and Accident, Volume II,” Report No. FH-11-6965, National Highway Safety Bureau, June 1970.
  10. ^ West, L. B., Jr. and Dunn, J. W. (1971). “Accidents, Speed Deviation and Speed Limits.” Traffic Engineering. 41 (10), 52-55
  11. ^ Fildes BN, Rumbold G and Leening A (June 1991). “Speed Behaviour and Drivers’ Attitude to Speeding”. Monash University Accident Research Centre, Victoria Australia,. Retrieved 3-2-2009. 
  12. ^ a b “Testimony of Julie Anna Cirillo”. Land Line Magazine (OOIDA). 2003-06-10. Retrieved 2009-03-02. 
  13. ^ John Robert Meyer, José A. Gómez-Ibáñez, William B. Tye, Clifford Winston (1999-02). Essays in Transportation Economics and Policy. pp. Page 276. ISBN 978-0-8157-3181-8. Retrieved 3-1-2009. 
  14. ^ Evans, Leonard (1991). Traffic Safety and the Driver. New York, New York: Van Nostrand Reinhold. pp. 155–56. ISBN 0-442-00163-0. 
  15. ^ Transportation Research Board, Committee for Guidance on Setting and Enforcing Speed Limits (1998). Managing Speed. National Research Council (U.S.). p. 46. ISBN 0-309-06502-X. 

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執筆者プロフィール

野村 一也
ライター
 創世カウンシル代表

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