裁判官による証拠の取捨選択の問題
上告趣意書において、検察官と被告人が請求(裁判所に提出)した証拠リストについて補足しておきたい。
請求数 | 撤回 | 却下 | 一部採用 | 採用 | |
検察官請求 | 14 | 2 | 2 | 1 | 9 |
被告人請求 | 87 | 0 | 73 | 0 | 14 |
検察官神田浩行検事が請求(裁判所に提出)した証拠のうち、却下された証拠はふたつとも横浜環状2号で発生した死亡事故の判決文である。
神田検事は、当該道路区間の危険性を示す証拠を提出するために、当該道路区間の延長にある交差点で発生した死亡事故を持ち出してきたのである。
そのふたつの事故は、双方とも車両相互の事故であり、極めて特異な態様であった。裁判所が参考にならないと判断して当然の事故だ。
「(近くの道路区間で)死亡事故が起きた!」
この事実さえあれば、検察と警察はすべての取り締まりが正当化できる、とでも思っているのだろうか。私は、神田検事の「証拠の妥当性を推し量る感覚」の鈍さにあきれた。
却下されたふたつのうちのひとつの判決文の事故態様は次のとおりである。
X氏は、信号待ちで停車中、ブレーキペダルを踏んでいた足がゆるみ、するすると動き出した運転車両が前方のY氏が運転する車両に接触した。
飲酒の自覚があったX氏は、あわててUターンし、逃走を図った。一方、Y氏は逃走するX氏の車両を追いかけた。
おそらく、追跡するY氏の車両に気付いたX氏は、赤信号を無視して、岸根交差点に進入した。
X氏の車両は、左方向から同交差点に進入してきたZ氏が運転するタクシーに、衝突し、タクシーの乗客が死亡した。
報道によれば、X氏のアルコール濃度の測定結果は、0.25mg/mlであった。これは、2006年の酒気帯び基準引下げ前なら、酒気帯び運転にならなかった数値だ。そして、この酒量では運転を阻害する要因は極めて低いので、多くの国では許容されている。
たらればの話しとなるが、次のいずれかが実現していたら、この死亡事故は発生していない可能性が高い。
- 酒気帯び基準の引き下げがなかったら――
- 飲酒の許容量が諸外国のように告知されていたら――
- 警察が微々たる飲酒運転にまで極悪非道のレッテルを貼らなければ――
- 事故鑑定が違反点数で処理されるのでなく、科学的に行なわれていたら――
- わずか加療期間の事故を人身事故扱いしていなければ
- むち打ちに代表される便乗詐欺が蔓延していなかったら――
- 警察が被害程度と過失責任に応じた事務処理をしていたら――
ほとんどの国において、X氏がY氏に衝突した後の対応は次のとおり。
- X氏
- 「(Y氏に駆け寄り)大丈夫ですか?」
- Y氏
- 「大丈夫」
- X氏
- 「僕が悪いので修理代は僕が出します。連絡先を教えてください」
- Y氏
- 「じゃあ名刺を交換しておこう。急いでいるから、明日連絡して」
- X氏
- 「すみませんでした」
※物損だけなら、警察への連絡も必要はない。
私が刑事被告人となっている裁判の話しに戻ろう。
とにかく、検事が請求(裁判所に提出)した交通事故の判決文は、素人の私からみても、とうてい参考になるような態様ではない。却下されて当然の証拠だ。
却下されて当然の証拠を差し引くと、検察官が請求(裁判所に提出)した証拠はすべて採用されている。
一方、被告人が請求した証拠の採用率は、わずか16%に過ぎない。
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