民主主義の最後

この記事は、大阪都構想に賛成!の続編です。開票結果後の報道を見た後で記事を書き始めました。

なお、図表は、投票前日に完成できなかったものを仕上げてアップロードしました。これは、大阪都構想の全体をイメージして描いています。

大阪都構想の住民投票は民主主義の存在を示す投票率を記録したものの、それ以外の選挙における投票率が示しているのは、民主主義の破綻にほかならない。

大阪都構想の全体像

図表の解説

住民投票の選挙活動において、橋下氏は「2重行政」を最大の論点とした。それは大阪府と大阪市の二重行政である。しかし、2重行政は国のレベルにも多く存在する。中央省庁が「完全なる棲み分け」の下で縦割りの行政府を完成させているからだ。そして、中央省庁の縦割りは、地方自治体と国民に極めて大きな不合理を生んでいる。

図表において「地方自治体」ではなく「地方政府」としたのは、国と地方が対等な関係にある諸外国では、地方自治体ではなく地方政府(Local Government)となっているからだ。そして、選挙運動戦終盤での橋下氏は、「大阪政府」という言葉を使った。

日本においては、国の下に地方があり、地方自治法に定められた範囲でのみ自治を許されている。この構造では、住民の意見を行政に反映させるにも限界がある。この現実は、沖縄の基地問題において、国が沖縄県のいうことに耳を貸さない事実が如実に示している。

これら中央省庁の縦割りによる2重行政と国優位の問題以外に、大阪には、都道府県と市町村の横割りによる2重行政の問題が甚だしい状態となっているのである。橋下氏が中央省庁の問題に触れなかったのは、大阪市の財源で行なう住民投票で、国の問題を持ち出すことをはばかってのことだろう。

行政メカニズムの原則

「現在の行政構造でも、府と市の連絡会議で2重行政は解消できる」

反対派筆頭の自民党大阪市議団の柳本顕幹事長は、大阪都構想に対する反論をこんな風に述べていた。しかしながら、行政システムは、シンプルで機能的なメカニズムを基本とすべきである。複雑にすれば、それだけ誤作動の可能性が増すからだ。

つまり、行政メカニズムの基本を見直す必要があるなら、シンプルな大阪都構想を選択しない理由はない。ただし、見直しの必要性を認めさせることは、今回の投票ではうまくいかなかったようだ。

変革はたいへん 現状維持はかんたん

変革よりも、現状維持の方がはるかに楽である。それゆえ、「よく分からないから反対…」とした人は決して少なくないはずだ。そうした「現状維持の優位性」を勘案すれば、なおさら、わずかな差による否決が残念でならない。

そして希望のない時代は続く

自民・民主・共産の合同演説さて、選挙戦の終盤において、「大阪都構想」に反対する自民党大阪府連の国会議員らは、民主・共産両党と合同街頭演説を行った。地方の問題であるにもかかわらず、国の政治家が徒党を組んで反対を訴える様に、違和感を覚える人は少なくなかった。

異例の反対運動に打って出た国会議員らは、おそらく自分達の存在価値に危機感を抱いたに違いない。そして、彼らにとっての守るべきものは、現在の国家構造における自分の地位なのだろう。

執筆者プロフィール

野村 一也
ライター
 創世カウンシル代表

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