並々ならぬドライバーの努力
悪者はいつもドライバー
ドライバーは「相手がケガしたらお前が悪い」という警察論理の下に置かれている。それゆえ、ドライバーは、交通事故の当事者にならないため、並々ならぬ注意を強いられている。
「相手がケガしたら、お前が悪い」の警察論理
警察のデータベース『警察管理システム』に人身事故を登録するための様式<事故登録(票)>は、<違反登録(票)>と内容がほとんど同じだ。そして、交通事故の事故原因欄には、<違反登録(票)>の違反欄と同じ番号が登録される。そこに記入される違反は、違反点数の大きいものを優先して登録することになっている。このことは、警察が人身事故の原因を違反点数で決めていることを示してる。
また、別の警察事務において、人身事故が発生すれば、ケガをさせた方が第1当事者、ケガをした方が第2当事者として記録される。
このふたつの警察事務によって、第1当事者(ケガをさせた方)の違反点数が事故の原因として処理されるのである。詳しくは次の画像のリンク先を参照。
「相手がケガしたら、お前が悪い」とばかりに、加害者にすべての過失を押し付ける警察論理の事例をひとつ挙げよう。
片側3車線の高速道路を運転しているとき、思いもよらず、右側から歩行者が出てきた。時速100キロで走行してたあなたはそれを避けられずに歩行者をはねてしまった。クルマに伝わる衝撃から、その歩行者が無事でないことは確かだ。
一瞬、真っ白になった頭に次の思いが浮かぶ。
「避けられるわけがない・・・でも、オレが悪者にされちゃうのか・・・」
大阪府高槻市紅茸(べにたけ)で発生した死亡事故
2014年11月7日午後6時50分ころ、名神高速道路を歩いていた男性が車両5台に次々にはねられ死亡した。
かけつけた府警高速隊は、最初に男性をはねたトラックを運転していた会社員(61)を自動車運転処罰法違反(過失運転致死)の疑いで現行犯逮捕した。
死亡した男性は、中央分離帯を乗り越えて反対車線に入り込んでいた。
明日はあなたも殺人犯
これと同じようなケースは、毎年のように報道されている。その結果、ドライバーは、「(ケガをした方の過失が問われるべきケースであっても)加害者の立場に置かれたら、自分が悪者にされる」ということを無意識に学習する。
ドライバーは、逮捕・起訴されたら、有罪を認定するだけの裁判所で処理されることも知っている。詳しくは次の画像のリンク先を参照。
そうしてドライバーは、交通事故の当事者にならないために並々ならぬ努力をするのである。
一般道のケースでみると、横断禁止の道路を渡る歩行者との事故はクルマが悪者、これは当然。問題なのは、夜間の道路に寝そべる泥酔者をひいてもクルマが悪者、自転車やオートバイが一方的にぶつかってきてもクルマが悪者(リンク先「実例2」と「つちやかおりのケース」)として処理されていることだ。
つまり、警察論理は、横断歩道を渡る歩行者と、高速道路を横切る歩行者において、その扱いにあまり違いがないのである。ついでに書けば、日本のドライバーが横断歩道で待つ歩行者に道をゆずらない理由がここにある。
ちなみに多くのドライバーは、警察の規制と取り締まりに対するドライバーの不満が公にならない理由も知っている。
並々ならぬドライバーの努力
「安全はひとりひとりの心掛け」
こんな掛け声はさておき、警察が実践し、暗にニュースを通じて広報されているのは――――――
「気をつけろ。相手のケガはお前の罪」
これを恐怖政治と言わずして何と言おう。ドライバーは、一方的にクルマが悪者にされる法罰の恐怖に怯え、事故の当事者とならないために、並々ならぬ努力を余儀なくされるのである。それは、交通ルールを守るといったレベルより、はるかに高度な努力をしている。特に、歩行者や自転車との事故に対しては、神経がすり減るほど注意をしている。
そもそも、交通事故にかかわりたいドライバーなど存在しない。運転経験による程度の違いはあれ、すべてのドライバーが安全運転を心掛けているものである。そのうえに、恐怖政治ならぬ恐怖警察がドライバーに並々ならぬ努力を強いているのである。
こうしたドライバーひとりひとりの過剰なまでの心がけが、事故の減少にどれほど貢献しているかは計りしれない。それなのに、警察は、こうしたドライバーの努力にいっさい触れることはない。ただひたすら「取締りで違反が減った!事故も減った!」とアピールし続けている。
人身事故が減少する要因はたくさんあるので、これからも人身事故は減少を続ける。弱者ばかりがターゲットとなる取締りに事故防止の効果など存在しない。それでも警察は、事故の減少を自分たちの手柄に見せるために、大量の警察力を交通に注ぎ続けるだろう。
警察が権威維持と予算獲得を優先させる結果、本当に必要なところに警察力は向けられていない。それどころか、交通事故統計の印象操作同様、犯罪統計の信憑性は極めて怪しい。詳しくは次の画像のリンク先を参照。
どうやら警察が活躍するのはテレビの中だけのようだ。