飲酒運転根絶が国策となった理由
2001年、警察庁が策定した飲酒運転の罰則強化を織り込んだ道路交通法の改正案は、異例のスピードで施行された。以後10年以上、飲酒運転に対する怒涛の厳罰化が続けられている。
警察庁が厳罰化を強行したのには、差し迫った理由があった。それは警察批判の解消である。
犯罪白書より抜粋1999年から2000年に続いた警察不祥事によって、警察の威信は地に落ちた。右図表に示すとおり、盗難やひき逃げなどの犯罪はそのころに増加しており、警察が信用されていないときに、犯罪が増加することは裏付けられたと言ってよいだろう。
警察への不信感で増加した犯罪を、まっとうな手段で治安を回復させるには、警察が信頼を取り戻す必要があったのである。しかし、警察庁は別の手段を選択した。
重篤な事故が多発しているかのようなプロパガンダで世論を煽り、必要以上の厳罰化によって、警察力をアピールする機会を増加させたのである。 そうして、悲惨な事故への危機感と交通違反者への敵意を誘起させ、それを排除する正義を演じ続けているのが現在までの10余年間の警察の基本政策だといえる。
一方、警察不祥事の際に警察刷新会議も提言し、最も根本的な問題であるはずの公安委員会の形骸化については、提言から15年たっても何も変わっていない。警察刷新に関する緊急提言に記された「公安委員会の活性化」どころか、いまだに独自の事務局すら存在しない。警察への苦情も公安委員ではなく警察官が処理している。警察を管理するはずの公安委員会の事務を警察官が行っているのだから笑い話にもならない(≫公安委員会と教育委員会)。
その一方、警察官個人の犯罪は以前に増している(≫警察官の性犯罪)。 以上のとおり、交通規制強化とその厳罰化が実施された本当の理由は、警察改革の必要性から世論の目をあざむくためだと評価されても仕方ないだろう。