交通安全運動の目的は、以前は警察権威の回復であった。現在の主たる目的は、「取締りによって事故が減った」という警察発表を裏付けるデータを作ることである。

全国一律の取り締まりノルマ

交通取締りにノルマが存在することを、神奈川県警察は文書で明らかにしている(>>警察のノルマ)。 しかしながら、元警察官が暴露することはあっても、警視庁は、組織として、決してノルマの存在を明らかにしようとはしない。

しかしながら、次の理由により、警察庁には各都道府県の検挙数をコントロールする必要があり、とうぜん警視庁にも、警察庁からのノルマが課されていること が推察できる。

1.「取り締まりによって事故が減った」という広報は、警察庁が主導している。
交通安全運動は、内閣府が主催していることになっているが、その大綱を定めた交通安全基本計画は、警察庁案がベースとなる
なお、第9次交通安全基本計画の専門委員会の座長は太田勝俊氏である。太田勝俊氏は「規制速度決定の在り方に関する調査研究」と「交通事故抑止に資する取締り・速度規制等の在り方に関する懇談会」の筆頭委員を勤めており、典型的な御用学者である。
そして、警察白書において、警察庁は、「取り締まりによって死亡事故が減った」と毎年アピールしている(>>交通白書抜粋)。
2.警察庁には、各都道府県警察本部への影響力を維持する必要性がある
交通安全対策交付金は、検挙件数ではなく、交通事故発生件数に準じて配分されている(>>反則金のゆくえ)。 この事実を鑑みれば、警察庁には、公正性、言い換えると、都道府県警察の労力(検挙件数)、に見合った分配をする必要が生じる。つまり、取り締まりに協力 せず、交通事故発生件数だけで交通安全対策交付金を需給する都道府県にはそれなりの分配金を、取締りをがんばった都道府県には多くの交付金が行くようにす るのである。そのためには、各都道府県警察の足並みを揃えさせる必要があり、そこに各都道府県警察の検挙数をコントロールする必要が生じる。
そうして、各都道府県警察がそれぞれのノルマを達成した結果が、「取り締まりによって交通事故が減った」という警察庁のシナリオに結びつくのである。
3.車両の安全装備向上などによる事故の減少傾向を警察の手柄にする
シートベルトの取り締まり

交通事故発生件数が頭打ちから減少傾向を示しだした平成14年版(2002)以降、警察白書では、事故が減少した理由として「シートベルトの着用率向上」を毎年挙げている。(>>交通白書抜粋)

シートベルト着用義務違反のシェアその間には、エアバッグの標準装備化をはじめ、劇的な車両の安全装備向上があるにもかかわらず、それには一切触れず、ひたすら取り締まりの成果をアピールし続けているのである。
警察白書によれば、平成14年度(2002)における装着率が87.2%。警察庁は、そこから毎年1%程度の上昇を示しているに過ぎない。

取締りで事故が減る!?

以上のとおり、誰にも迷惑を欠けないにもかかわらず、シートベルト着用義務違反の取締りがもっとも多いのは、「取締りによって死亡事故が減った」とアピールするためである、と言わざるを得ない。
同様に「事故直前の車両速度の低下」をアピールするために、事故の少ない安全で歩行者の出てくる危険性もない道路でばかりで、速度取り締まりが行なわれるのである。
そして、交通安全運動が交通運動になってしまうのは、「取締りが多ければ、事故が減る」ということをデータにするためである。
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