アスペンの街づくり

アスペンの街づくり

日本では、国家(警察庁)の旗振りによって、全国一律でクルマの停めにくい街づくりが進められた。駐車規制と取締りは、国家(警察庁)の指針に従って地域警察が行っており、住民や自治体の意見を反映する実効的な仕組みは存在しない。

一方、海外の都市は、道路を積極的に駐車場として利用している。海外の市町村(地方自治体)は、タウンオフィス(役場)にパーキングマネージャーといった役職の担当者がいる。住民、通勤者、そしてビジターに対し、便利な駐車サービスを提供するためである。そして、市町村(地方自治体)は、駐車サービスの提供と駐車規制の両方をコントロールしている。

海外の市町村の街づくりを見ることによって、日本の街づくりが異質であることを考えてみたい。そして、国家(警察庁と国土交通省)があまりに多くを規制するために、民主主義と地方自治の両方が不在で、全国一律の街づくり行われている問題を指摘したい。

筆者は北海道ニセコエリアに住んでいるので、同じスキーリゾートのアメリカコロラド州のアスペンの街づくりを、アスペンが広報している内容のほか、最下段にリスト化したページを参照し、まとめてみた。

アスペンの概要

アスペンの街は 19世紀の後半に銀鉱山として栄えた。しかし、銀の価値が暴落した後、銀の採掘場は閉山に追い込まれ、人口も激減した。

20世紀になってから、 2000メートルを超える標高がもたらす雪質の良さを活かし、 アスペンマウンテンスキー場ができた。さらに、アスペンハイランズ、バターミルク、そしてスノーマスの3スキー場がオープンし、アスペンは一大スキーエリアとなった。

出典:espn Press Room

その後、著名人が住居や別荘などを建てたり、高級ブランドのお店が並ぶようになり、スキーリゾートとしての地位を確立した。そして近年では、ウインターXゲームが、アスペン(バターミルクスキー場)で開催されるようになった。

参考までに、世界的に有名なスキーリゾートの標高(ベース付近)をリスト化した。

標高(m)
ニセコヒラフ(日本)240
ウィスラービレッジ(カナダ)675
サンクト・アントン・アールベルグ(オーストリア)1,304
バンフ(カナダ)1,384
サンモリッツ(スイス)1,822
クールシュヴェル(仏)1,850
アスペン(米)2,405

アスペンの交通マネジメント

青空駐車の許可制度

日本では、国(警察庁)が全国一律で青空駐車を禁止し、すべての道路が駐車禁止とされている。一方、海外都市の多くが青空駐車の許可証を発行し、地方自治体が柔軟な駐車マネジメントをおこなっている。

ここでアスペン市による駐車規制のゾーニングマップを確認しよう。

aspen_parking_map

斜線部はレジデンシャル・パーキング・パーミット(RPP)ゾーンに指定された住宅地で、アスペン市の許可を得れば無料で路上駐車ができる。なお、住人でなくとも、各レジデンシャルゾーン毎に1日2時間まで無料で路上駐車できる。

駐車違反は、Genetec社のALPR(ナンバープレート認識)技術よって検証されている。これにより、アスペン市は、1日パスやRPPなしで、8時間内に2時間以上住宅ゾーンに留まる車を特定することができる。取締りを実施する車両は、パスやパーミッションの所有者情報を含むデータベースにアクセスできるので、物理的なパスは必要ない。

GENETEC PARKING ENFORCEMENT
GENETEC社のWEBサイト

ダウンタウン/隣接住宅地の路上駐車マネジメント

RPP(レジデンシャル・パーキング・パーミット)は、ダウンタウンの路上駐車を有料化する際、ダウンタウンに隣接する住宅地に過剰な駐車車両が流れないようにするために導入された。

各RPPゾーンには、誰でも2時間まで無料で路上駐車できるが、1日7ドルの駐車パスを購入することによって、2時間を超えて駐車することも可能だ。。そのほか、RPP地区内の企業は事業用車両用、ロッジはゲスト用の路上駐車許可証を購入できる。

アスペン市は、路上駐車場の利用状況をモニターしており、1年間の平均占有率が85%を超えると、料金が引き上げられることになっている。

ダウンタウンの路上駐車料金

当初、ダウンタウンの路上駐車料金は1時間あたり1.00ドル、時間制限は2時間までとされていた。しかし、2時間を超える駐車を希望する利用者のニーズを受け、アスペン市は制限時間を4時間に延長した。ただし、累進的な料金体系を採用することで、駐車ニーズへの対応と長時間の駐車を抑制とのバランスをとった。そして現在の駐車料金は、最初の2時間が1時間あたり2.00ドル、3時間目は3.00ドル、4時間目は4.00ドルとなった。これらの駐車料金は、支払いステーションまたは電話で支払うことができる。

ダウンタウンの路上駐車場の使用料金の支払い/徴収には、一般的なペイ&ディスプレイのほか、車載メーターが採用されていた。車載メーターは住民に好評だったが、アスペン市は、車載メータに代えて、電話による支払い/徴収システムを導入した。この新しいシステムにより、アスペン市は様々な季節、日時、時間帯に駐車プロモーションを実施することができるようになった。こうして、アスペン市は、クルマによるダウンタウンの訪問をコントロールしている。

(所感)民主的な街づくり vs 国家主導の街づくり

なお、アスペン市の街づくり(交通マネジメント)は、民主的なチェックを受けて実施されている。

1995年、アスペン市がダウンタウンの路上駐車の有料化を計画したことに対し、アスペン市民の多くは否定的な反応を示した。そこで、アスペン市議会は住民投票を行うこととした。有料化の3カ月後に行われた投票の結果、75%が有料可に賛成した。

ここで着目して欲しいのは、アスペン市が、国家や州の制約で街づくりを行ったのではなく、住民(=利用者)による民主的なプロセスを経て、交通マネジメントが行われていることだ。

アスペン市のRPP

そして、民主主義が機能する西欧都市においては、アスペン市と同じように青空駐車許可証や自治体による路上駐車場の設置が行われている。国家による詳細な規制がないにもかかわらず、各都市が同じような駐車マネジメントを行っているのは、別の都市の仕組みと比較検討されることにより、優れた駐車マネジメントが生き残るのだろう。このことは、都市の政策において、民主主義と競争原理が有効に機能していることを示している。

念のために補足しておくと、西欧都市がクルマ中心の社会を優先しているのではない。逆にどちらかというと、歩行者と環境への配慮は、日本よりも進んでいるように感じられる。アスペン市においても、前述の駐車プロモーションのほか、各種のクルマの運転を控えさせるキャンペーンが行われてる。

まぎれもなく、日本の街づくりは国家が主導している。箸の上げ下ろしを規制する法令とひも付きの補助金によって、横並びの街づくりが行わるばかりだ。とうぜん、都市間の競争原理も働いていない。

北海道新幹線の延伸による新駅の開設が予定されている倶知安の街づくりに対し、勝手に交通マネジメントプランを作成した。

倶知安の交通マネジメント案