死亡事故激増「死亡事故激増!」
この刺激的なフレーズを、警視庁は乱発している。

一方、神奈川県警は、2014年以前に「激増」という文言を使って死亡事故の増加をディスプレイしたことはなかった。それが2015年になって使われだしたため、その根拠を神奈川県警に求めた。

いったい何人増えたら「激増!」を使うのか?

年間発生数ベースなのか、前年同期比なのか、はては前月比較なのか、いずれにしろ大した根拠があるとは思っていない。おそらく、理由は後付けで出してくるだろうと予想していた。

公開を受けるため、神奈川県情報公開センターのブース内で待つと、情報公開の担当者のほかに、神奈川県警の担当者がふたり入ってきた。うちひとりがキャリア警察官であることは、自信満々の話しぶりから容易に予想できた。そのキャリア警察官が神奈川県警で初めて「死亡事故激増!」を使うことを決めたのだとういう。

「激増!」が何に比較して激しく増加しているかどうかはさておき、公開されて文書を見て、強烈な違和感がめばえたのは、すべての事故態様が黒塗りにされていたことだ。

交通事故を減らすためには、まず事故の態様に着目するのがセオリーだ。たとえば大型トラックの追突による事故が多ければ、その防止策を講じるといったような、より具体的な施策が行われるべきである。それを適切に作動させるためには、事故態様を公開するのは当然である。交通事故の報道される意義もそれが第一である。

ところが、神奈川県警は、次のふたつの理由を持ちだして事故態様を黒塗りにした。

  1. 個人の権利利益を害するおそれがある情報に該当する
  2. 犯罪の予防、捜査等に支障を及ぼすおそれのある情報に該当する

被害者の権利利益を持ち出す警察

被害者名を黒塗りするならまだしも、そもそも被害者名が掲載されていない文書上で、個人の権利利益を害するおそれを持ち出して事故態様が黒塗りにされるとは予想もしていなかった。

じゃあ、事故が起きるたび、警察から記者クラブを通してテレビや新聞でさらしものにされる被害者たちは、権利利益を害するおそれはないのか、と指摘したが、若いキャリア警察官は「あれはあれ、これはこれ」と程度の反応しか返そうとしない。

恐怖をあおるばかりで事故傾向を示さない警察

それから、すでに起きてしまった事故の詳細を黒塗りで隠すことによって、先に示した事故の発生傾向を鑑みた事故防止策が講じられることがされなくなるおそれがある。事実、「死亡事故激増!」の電光掲示に具体的な傾向が示されていない。ただ漠然と「死亡事故激増!」と交通事故で死亡することに対する恐怖をあたえようとしているにすぎない。

表の黒塗りされていない部分をさらりと見るだけで、トラックを加害車両とする事故が多いのは一目瞭然である。神奈川県警に本気で事故を減らす気があるのなら、その状況を明示し、具体的な事故傾向に注意を呼びかけるのが当たり前である。

当たり前のことをせず、公開すべき情報を秘匿し、大雑把かつ刺激的に「死亡事故激増!」を広報するだけの神奈川県警は、死亡事故が発生すると「よっしゃ来た!」と喜んでいるに違いない。交通事故の恐怖を与えることによって、警察の存在理由をアピールできるからだ。そして、減らす努力よりも、それを刺激的にアピールすることばかりに心を囚われているようにしか見えない。

警察がつくる事故統計