交通ルールは守れない

事故を半分に減らす方法

警察がつくる事故統計

交通事故を半分に減らす方法

警察がつくる事故統計

情報土木警察は、交通事故を減らすことを大儀として、さまざまな施策を行っている、それは交通規制と交通取り締まりだけでなく、信号機とその制御システム、渋滞情報を捕捉するためのインフラ、そして、先進のITSなどと多岐にわたっている。しかしながら、事故は極めてかんたんに半減することが可能である。しかも、制度の考え方を変えるだけなので、既存のマンパワーでまかなえるはずだ。警察庁が、社会資本整備重点計画からITS関連でもくろんでいる獲得予算(警察によるITSの今後の展開の11p)に比較するなら、コストゼロといっても過言ではないだろう。

1走行億キロあたりの人身事故件数
まず、右の表を見てほしい。
この表は 、内閣府が発行する平成17年判交通安全白書に収録されたデータ諸外国の交通事故発生状況から必要な数値を抜粋し、計算したものだ。

1走行億キロという単位によって、クルマの数と道路延長の差は平準化される。そのデータには、他の国の2倍以上の交通事故が日本で発生していることが示されている。なお、ここでいう交通事故は、いわゆる人身事故であり、日本では、医者の診断書があれば、それだけで警察は人身事故として統計に加えている。

その考察は、警察が作る事故統計に記したとおりだ。

1当死者数の増減傾向

2当軽症者数の増加傾向

左の表は、(財)交通事故総合分析センターが10年ほど前にまとめたものだ。頚部の棒が飛びぬけていることは、むち打ち症を訴えて病院に行く被害者が多いことを示している。一方、右の図は、自損事故では、頚部が原因の死者が激減したことが示されている。2つの統計は、診断が困難なむち打ち症を利用して、利益を得ようとする人の増加を如実に示している。そのことは、(財)交通事故総合分析センターに暗に認めている。

被害者の過失も追求すれば交通事故は激減する

警察が作る事故統計に記したとおり、警察は、ケガをした方を被害者、もう一方を加害者として認定し、おそろしく単純に処理をしている。さらに事故原因を事故の点数で決めている。ある程度の運転経験がある道路ユーザーは、ケガをすれば(医者の診断書があれば)被害者になれることを、経験的または人づてに知っている。だから、医者の診断書を利用した詐欺(現在の司法は、決してそれを詐欺を認めないので、便乗詐欺としておこう)がこの国には蔓延している。その結果、先の統計で、ほかの国の倍もの人身事故が統計に表れてしまうのである。

航空をはじめ、船舶や鉄道の事故については、日本だって科学的な調査・研究の結果が行われ、事故防止はもちろん、さらに進んだ課題に活用されるようになっている。一方、道路での事故は、「相手がケガをしたんだからお前が悪い」といった程度の処理しかされていないのである。

単純な事故において、第2当事者(被害者側)を完全に無過失扱いし、すべての責任を、警察の認定する第1当事者(加害者)に押し付けるのではなく、少しは科学的な捜査を警察がするようになれば、警察が上積みしてきた交通事故はすぐに減らせるはずだ。

ケーススタディ|おそろしく単純な事故処理

イメージ実例1実例2つちやかおりのケース
交通事故が極めて安直に処理されている現状は、実感がわかないかもしれないので、わが身に置き換えてイメージしてみよう。

深夜のドライブ

深夜、貴方は流れのよいバイパス道路を走っている。別に急いでもいないので、速度は時速50キロ程度だ。道路は片側3車線で歩行者横断禁止の区間に差し掛かり、貴方は快適にクルージングをしている。突然、まさかの中央分離帯側から何かが飛び出してきた。ブレーキを踏む間もなく、貴方はそれをはねてしまう。頭が真っ白になりながらも、クルマを降りて、後方を見ると、そこには、血だらけの人間が横たわっていた。

ほどなく、駆けつけた警察官は、貴方を第1当事者として記録する。第1当事者とは、当事者が複数の事故の場合、より過失が大きい側に割り当てられる。なお、この作業は交通捜査係の警察官が行い、歩行者と車両の事故なら、間違いなく車両側が第1当事者とされる。

事故の因果関係を捜査書類にするため、警官は、貴方を見て、まず飲酒運転の可能性を判別し、それからこう尋ねる。「どのくらいのスピードで走っていましたか?」そこで貴方が規制を超えた速度を供述したら、事故の原因は貴方の速度違反となる。もし、貴方に何ら違反らしきものがなければ、警官は安全運転義務違反を貴方に被せてくる。この時点で、貴方は自動車運転過失致死傷罪の被疑者となり、以降、警察が歩行者の過失を追求することはない。>>警察がつくる事故統計

「あんな場所で突然出るてきたら対処できないよ・・・」と貴方は泣きたくなるが、警官が事務的に行う調書の作成に対し、貴方に対抗する術はない。こうして、貴方は、まな板の鯉となる。包丁をさばくのは、司法機関だ。もし、相手が死んだら、貴方は刑務所に送られる。

イメージに示した事故は実際に発生した。

場所は、本件取り締まりの舞台となった横浜環状2号線の対向車線側。

下の切り抜きは神奈川新聞(2013.6.4) 同じ事故へのリンク(産経NEWS)
20130614kanagawa_news

左の動画は、港北警察署で交通規制と取り締まりの方針について取材をしようとしたときの記録。交通課のイザワ課長は、港北警察署がいつも速度取締りを行っている環状2号線の反対車線側における上記の死亡事故を持ち出し、取締りを正当化しようとするため、事故の詳細を確認している。その事故は横断禁止区間を夜中に渡ろうとしてはねられたようだ。イザワ課長は、過失が大きい(と現場の警察官が認定した)方を第1当事者として扱い、死傷した方(100%歩行者)を第2当事者として扱う。第1当事者に目だった違反がなければ、警察は「安全運転義務違反」を違法行為として第1当事者にあてがって処理していることを名言している。この手法は、港北警察署にかかわらず、警察の事故処理としてシステム化されている。

信号無視の泥酔バイクに突っ込まれても悪いのはクルマ!?

トラックを誤認逮捕

トラックを誤認逮捕

記者クラブを通じた新聞報道

23日午前4時25分ごろ、川崎市幸区小倉3丁目の市道交差点で、近くに住む飲食店経営の男性(36)のオートバイとトラックが衝突した。オートバイの男性は胸を強く打つなどして重傷。幸署は自動車運転過失傷害の疑いで、トラックを運転していた同区南加瀬4丁目、トラック運転手の男(62)を現行犯逮捕した。同署によると、現場は信号機のある十字路。オートバイが直進中、左から来たトラックとぶつかったという。(12013.11.23 神奈川新聞)

新聞のなかには、トラックのドライバーの住所と氏名を報道したものもあった。しかしながら、右にPDFをリンクさせた物流weeklyによれば、事故の真相は、「早朝まで酒を飲んで泥酔した状態でバイクに乗り、信号を無視して一時停止することなくトラックの側面に突っ込んできた」ということのようだ。病院の証言も「バイクの運転者から相当な酒の匂いがした」という。

なお、物流weeklyは業界紙であって、一般の人が見る新聞でない。一方、何の取材もせずに警察発表をそのまま報道した新聞各社が、警察の誤認逮捕を報道することはなかった。

バイクの運転手に飲酒運転があったから、まだこのドライバーは救われたものの、それがなければ、おそらくこのドライバーは刑務所に送られたはずだ。なお、原告にも同様の経験がある。

これらの例が示す通り、警察は、ケガのある方法を被害者、もう一方を加害者として、恐ろしく単純な処理をしている。そして、被害者(第2当事者)に一目瞭然の過失があり、それに警察が気付かなければ、警察の認定する加害者(第1当事者)には、司法と報道が課す罰に対抗する手段はない。

元シブがき隊のタレント布川敏和さん(48)の妻で、タレントのつちやかおり(本名・布川かおり)さん(49)が東京都内で乗用車を運転中、20代の女子大生の自転車と衝突し、重傷を負わせる事故を起こしていたことが13日、警視庁玉川署への取材で分かった。

同署によると、事故は9日午前10時15分ごろ、世田谷区中町の信号のない交差点で発生。つちやさんが交差点に差し掛かった際、右から来た自転車と衝突した。自転車側の道路に、一時停止の規制があったという。

女子大生は顔面骨折などの重傷。同署が事故原因を調べている。(2014.05.13産経ニュース)

当事者が不倫騒動中の芸能人とあって、ネット上には、つちや氏を非難する声が溢れている。しかしながら、その多くが民事責任と刑事責任の区別さえなされていない。ゴシップ論はさておき、つちやかおり氏のケースは、警察に自転車の交通事故を減らす気があるかどうかを評価する試金石となり得るはずだ。

まず、刑事で無罪なのに民事で賠償責任を負ったり、その逆のケースがあることを抑えておこう。そして、つちや氏の「私の車の側面に衝突された」という主張を事実として、つちやかおり氏の刑事と民事の責任をそれぞれ考察しよう。

刑事責任

広義的な「過失責任の原則」に基づいて考えるなら、事故の発生は、専ら自転車の一時停止不履行に原因があるといえる。参考となる判例として、2009年、福岡市博多区の国道交差点に一時停止を怠って車道に飛び出した自転車にオートバイが衝突し、反対車線に投げ出された対抗してきた乗用車にひかれ死亡した事件がある。この事故では、自転車の男性に対し、禁固1年執行猶予3年の判決がなされた。(asahi.com

福岡のケースは国道で、つちや氏のケースは生活道路との違いはあるが、福岡のケースで自転車は側面衝突ではない。一方、つちや氏のケースの自転車は車両の側面に衝突している。これは、生活道路における(つちや氏の)過失を減少させる理由となる。

生活道路を走行する車両とはいえ、優先権を無視して突っ込んでくる自転車に対し、定義があいまいな道路交通法上の安全運転義務違反で処理するのは、科学的な考察に背を向けた行為である。原因を明らかにし、より安全な施策を考えることを拒否し、ただ治安維持を大儀として安易に警察が認定した第一当事者に罪をなすり付けているに過ぎない。

そして福岡のケースにおいても、検察の主張は「自転車側に著しい注意義務違反があり、死亡事故が発生した」とされている。もちろん、死亡ないしケガをしたのは、福岡ではオートバイ、つちや氏の場合は自転車との違いがあるが、それは「過失責任の原則」をねじ曲げるものではない。どちらがケガをしたかで、事故の原因を変えることなど許されるわけがないのである。

ただし、本当に残念なことであるが、この国では警察も司法も「過失責任の原則」に基づく判断はしない。そして「相手がケガをしたからお前が悪い」の論理で処理されている。つちや氏も安全運転義務違反という抽象的な義務違反を押し付けられるはずだ。ただし、芸能人特権で起訴はされないだろう。

もしも警察に自転車による交通事故をなくす気があるのなら、ケガをさせた方を悪者にする非科学的な事故処理を改め、交通工学的に事故原因を評価し、事故が発生するに至った要因を明確にすべきである。その上で、自転車に主たる要因があると判断したなら、それをちゃんと発表すべきだろう。それをしないなら、「自転車無罪」に乗じた自転車のルール違反はなくならず、詐欺まがいの行為がさらに蔓延し、そして自賠責の保険料はゴネ得狙いの事件でその多くを失い、結果、本当に必要な事故に保険金がまわらないか、あるいはさらなる保険料の値上げに繋がるはずだ。

民事責任

本当に残念であるが、この国では民事不介入を掲げていながら、捜査機関は刑事罰をチラつかせることによって民事に介入してくる。具体的には、警察は過失割合の考察を一切せずに加害側に立たされた者に誠意を持った示談を要求する。>>「事故多発!」のプロパガンダ

そこで被害側の責任を指摘する作業は不可能である。被害者の責任を指摘できない加害者は、仕方なく、1度だけ直接謝意を示すだけで、あとは保険会社のアジャスターに交渉を委ねることになる。事故の程度が軽ければ、事例毎に過失割合が記された保険会社のハンドブックに準じて処理されるだけだ。

被害の程度が大きければ訴訟となることもあるが、つちや氏の場合、事を荒立てると芸能生命に致命的なダメージを受けるため、被害者の要求を飲まされることとなるだろう。

つちや氏が芸能生命をかけて「避けようがなかった」と争うことはないはずだ。だから、被害者が自らの過失を省りみることもなく、厚顔な請求をしないことを期待したい。

さらに交通事故を減らすかんたんな方法

出来高払いの医療制度自動車事故において、もっとも多い事故態様は追突事故である。追突事故が発生し、現場に到着した警察官は、被害者に対し、安易に「おケガはありませんか?」と声を掛けている。そのこと自体に問題はないが、前述した意識変化によって、被害者は首をさする演技をしがちである。救急車で病院に搬送されたら、医師は診断書をかかなければならない。診断書を書くには傷病欄を埋める必要がある。そこに「異常なし」と記す医者は存在しない。なぜなら、医者の報酬は、傷病と治療内容ごとに点数で支払われる「出来高払い」だからだ。

つまり、救急車を呼べば、すなわち人身事故となってしまうのである。このあたりは非科学的な交通捜査に詳細があるのでご参照ください。

ところで、トリアージという言葉を聞いたことがあるだろうか。本来は、非常事態に行われる処置である。一方、東京消防庁の実施する救急搬送トリアージは、タクシー代わりに救急車を使用させられることが、本当に救急搬送が必要なケースを圧迫することから、ケース毎の緊急性を積極的に判断することだ。

東京消防庁は、緊急搬送トリアージを実施するに当たって、警視庁に対し、2007年(H19年)に協力を要請する文書を送った。しかしながら、警視庁からは何の反応もなかったそうだ。実際、警視庁のホームページで「トリアージ」と検索しても何ひとつヒットしない(警視庁での検索結果東京消防庁で検索結果)。

本当のむち打ち症は、治療が困難ではあるが、処置が早いからといって、その治癒に劇的な変化がある傷病ではない。あとから痛くなって、病院に行ったら、むち打ち症と診断された、そんな性質のものだ。東京消防庁が定める救急搬送トリアージシート(pdf)にも、むち打ち症に緊急性を認める項目はない。

以上のとおり、むち打ち症が本当であっても緊急性はない。だから、事故現場の警察官が、被害者が便乗詐欺に乗るおそれのある甘い言葉を避け、消防とちゃんと連携して、緊急搬送トリアージに協力したなら、追突事故は激減する。あくまでも警察が被害者の権利を尊重したいのなら、「後からでも人身事故扱いにできますから」と口ぞえすればよい。もしそれができたなら、警察が統計する追突事故は激減する。同時に、自賠責保険も値上げしなくて済むし、本当に重篤な被害者に対する払い渋りも少なくなる

自転車の事故を減らすのもかんたん

この国における自転車のルール軽視は末期的だ。善良そうな高齢者も前かごに子供を乗せたお母さんも平気で赤信号をわたり、基本中の基本であるはずの左側通行でさえ、まったく浸透していない。結果、交通事故の20%が自転車絡みの事故となっている。

さすがに警察庁も対策をせざるをえなくなり、自転車に反則切符を切ってみせたり、広報上のアクションを起こしてみたりし始めた。

しかしながら、そんなことをしなくても、自転車の事故はかんたんに減らすことができる。カネと時間のかかる青臭い自転車交通安全教室をする必要もないし、ブレーキ不備のピストバイクにのった芸能人をマスコミにリークして、記事にさせる必要もない。

その方法とは、自転車の違反や過失で責任をちゃんと追求することだ。最初のセクションで示したとおり、クルマと自転車の事故の場合、ケガをするのは自転車だ。あとは「相手がケガしたんだからお前が悪い」の警察論理で処理されている。自転車が赤信号を無視しようが、右側を走っていようが関係ない。

これを、自転車の違反や過失が主たる事故要因となる場合には、自転車の責任をちゃんと追求すればよいのだ。当然、民事事件としての過失割合も変化し、自転車の過失が大きければ補償してもらえない判例が増加する。そうしたら「被害者天国」に便乗した事故は激減する。

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